旧型国産ベースを使える楽器にしよう

GRECO_PBS
 以前から自分でパーツを改造して使っているベースなのだが、その経緯を含めて紹介しよう。

小生の田舎は電照菊が盛んな農村である。
ここでデンショウギクを知らない人に説明すると、菊に夜間も照明をあてて日照時間をずらし出荷時期を人間が調整する栽培システムである。

毎年秋から春先にかけてこうこうと電気のついた菊畑がいくつもあるのだ。 畑では道具を置いたり、悪天候時に非難したり、休息をとる小屋が敷地内に隣接している場合がおおい。 人里離れた小屋に電気がとおっているのだ。夜は農作業が行われず、菊を騙す(昼と思わせる)照明だけついた状態なのである。 これを利用しない手はないということで、農家と交渉し格安の料金(相場5000円/月)で農作業終了後にバンドが使いたい放題という環境が容易に手に入った。 複数のバンドでお金を出し合えば高校生でも練習場の確保ができる。

当然、農家との信頼関係が重要だが、親戚やコネでなんとかしたのもだ。(15年前)
加熱していたバンド熱も進学や就職で遠くなり主に忘れ去られた楽器が農作業小屋(高音多湿)に残る場合がある。
今回のグレコベースもその部類で、5年ほど持ち主が分からないので農家より我輩が里親として引き取った。
それは悲惨な状態であった。 異様に重いハードケース(農薬臭付き)に収められ、金属パーツは全てサビつき、ボリュームはガリノイズだらけ。 ネックは反り返り、指板はネックからめくれた状態。
これをパーツを一級品への交換と、塗装の修復で約25000円と見た。 DIY研究家としてはトライしない手はない。

実際の費用は以下の通り。
部品種/品名購入価格備 考
1ピックアップ/EMG-P\18,500今回は自分で取りつける。定価は\25,000だが、30%割引キャンペーン中に購入
2ペグ/ゴトー製\5,500 サイズが微妙に違うので、元についてたペグを楽器店に持ち込み、同じネジ位置のペグを探すとよいだろう。 今回はフェンダーPBと同じ大きさを買ってきたのだが、実際グレコに付けるとペグがちょっと大きかった。
3ブリッジ/バダス2\5,000 定価は\12,000くらいだが、この値段が付いていたので黙って買った。
4透明ニス/つや消し\800 フレット周りが手垢で汚れているので塗装ごとはがして再塗装
5細工ノミ\1,400 EMGは9Vの四角い電池をピックガード下に収めないといけない。これで削る。 手押しで削ることを前提にするので、刃は15mm以下の小さめがいいでしょう
6生ゴムスポンジ\160 ピックアップから弦までの位置を調整するためにピックアップ下からゴムスポンジで押し上げる。15mmくらいの厚さがあればOK

1.ネックの修理

手垢に汚れたネックである。 指板とネックが最終フレットから15フレットにかけてはがれている。
アイロンで暖めたあと、木工ボンドをネックと指板の間に塗り、バイス3本で強く挟む。フレットが傷付かないようにフレットの上は小さく切った板を挟む。 これで一昼夜そのままにする。

手垢を落とすにはカッターとヘラが合体したような「スクレイパー」という塗装はがしを使う。フレットとフレットの間のニスをガリガリはがす。 ネック全体は一度工業用アルコールで汚れを落とす。 サビ過ぎて使えなくなったペグもこのとき取り外す。 汚れを落としたら、ネックの握り具合もそのままの塗装でいい感じだったので、指板のみつや消しラッカー系ニスをハケで塗る。 薄めに3回ほど塗って終了。
フレットにニスが付かないようにマスキングテープを張ることも忘れずに。

2日ほど塗装を乾かし、ペグを取り付ける。 オリジナルよりちょっと大きい(重い)がかまわずも木ネジで取り付ける。

2.ブリッジの交換

フェンダープレシジョンのコピーモデルなので、ネジ穴が位置も大きさも同じなので取り付けが楽。
このバダス2というブリッジはオリジナルのフェンダーブリッジにサスティン(音の伸び)を強化したもの。
はじめからフェンダー社製のベースからのパーツ交換を念頭に開発されているので、簡単に取り付けができる。
これまた数分で終了。ネジは錆びていたが元のネジを使用した。

3.ピックアップの交換
御年配の方々は「マイク」と言う。 間違いではないのだが、マイクは空気振動を電気信号に変えるものを言う。
エレキ楽器に付いているピックアップは空気振動は拾わない。磁石にくっつく材質で作られた弦がピックアップの上を振動する信号を拾うのだ。 要は磁石にコイル(銅線、導線)を巻いたもの。 発電機と原理は同じ。
だからクラシックギター弦(ナイロン弦)を張ってもエレキでは音が出ない。 専用のピエゾピックアップというのもあるが、ここでは部門外のため説明省略。
てっとりばやい改造でポピュラーなのが、ピックアップ交換。
購入価格はおそらく5万円以下のベースと思われるので、ブランドの通ったピックアップに変えるだけでも多少は変化するだろう。 候補としては古いフェンダーのピックアップを復刻してる「セイモアダンカン」か、電池を内蔵しハキハキした音の「EMG」、暖かい(甘い)音の「バルトリーニ」が候補だ。
一度、バルトニーニに変更したのだが、どうもフェンダープレシジョン特有の太いブリブリした音が出ないのだ。
理由は分からない。 なので、今回は初のEMGにした。
取り付けはハンダ付けが2個所。 ピックアップとボリューム、ピックアップと電池コネクタ。
問題は電池の収め場所だ。四角い電池をピックガード下に収めるためボディー(木製)をガリガリ削らなくてはならない。
アパートで夜間に金槌とノミを振るうことはできないので、彫刻用の差押し式のノミ「細工ノミ」を購入。
掃除機で削りカスを掃除しながら削る。 9V電池が入るくらいはすぐ出来た。

GRECO_BT
さっそく音を出してると、バルトリーニ時代より出力がアップし、アクティブピックアップらしいハキハキした音になった。 これまでよりは「使える」という印象だ。
が、まだブリブリ感は希望していたほどではない。 よって、この改造は引き続き続行。


次回の研究課題
エレキベースは、ピックアップの取り付け位置によって音が変わるらしい。 そこで各社のベースのピックアップ取り付け位置を調査し、好きなメーカー、モデルの音も多少は出せるのではないか?
計算式は、ナットから12フレットまでの長さの二乗をナットからピックアップ中心位置で割った値の100分率らしい。 このあたりの情報は、当研究所のリンクコーナーにある「DGBスタジオ」にて研究されている。たいしたものだ。
こうご期待。

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