※わが研究所の財政難のため、2001年2月Yahooオークションにて売却し現金化。CD-R込みで落札価格60,000円
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これはローランドが95年から97年にかけて製造販売していた録音機器である。
入力された音声信号をデジタル方式(圧縮、非圧縮選択式)でハードディスクに記録していく。
各所のコストダウン化により、デジタルマルチレコーダーで民生機価格を実現させた。
この道場は次世代のVS880EXやVS1680を持っている人では無く、旧VS880や、これから中古購入を検討ししている人を対象に情報を提供する。
その中で紹介する部品交換やソフトウェアアップデートは自己責任を前提とする。
1.ミキサーバス(BUS)の設定が難しい
バスとは住宅の水道管にたとえられる。 一つの入力信号を分岐させたり、折り返したりする考え(接続方法)だ。
通常のオーディオ機器なら入力された信号は出力と1対1が多いが、音作りとなるとそれでは不便だ。
内部エフェクター送りや、外部接続のエフェクト(AUX)、そしてマスターアウトの折り返しなどの設定が難しい。常にマニュアルのダイヤグラム片手に作業しなければすぐ迷子になってしまう。
2.レコーダー部、ミキサー部の設定状況を一望できない
前記のバスにも関連しているが、各チャンネルに出ているつまみはパンポット1つだ。
イコライザーやエフェクター送り、バススイッチ等はすべて液晶画面で確認しグルグル回すジョグダイヤル(αダイヤル)を使う。
3.バックアップを行う為の機器を別途購入する必要がある
ハードディスクレコーダーの宿命だ。 内蔵ハードディスクは手軽に交換できないので、仮に落下などで破損した場合、一番衝撃に弱いハードディスクのみが損傷を受け、録音素材が復旧不能ということは容易に想像できる。
そこで外部別媒体へのバックアップだが、230MBのMOなら大体の機器で接続が可能らしい。
CD−RWもローランドから無償提供されるソフトバージョンアップにて使用可能になった。
なんとか低コスト化は進んではいるようだ。
4.アナログ入出力回路には妥協が必要
録音リハーサル時(スルーの状態)と、録音後に再生した音を聞くとMD程ではないが、音がヤセた感じがする。
A-DATやTASCAM DA88 は入った音がそのまま記録〜再生されていると感じるが、VS880ではその音に妥協が必要だ。 内部エフェクトと合せてメーカー特有のきらびやかな感じ。
それが自分にとって許容範囲かどうかだ。
アナログ信号(フォンジャック)入力時はマイクプリアンプで信号を増幅し、VS880側のトリムは最小にすると音ヤセは気にならないくらいになる。
デジタル←→アナログ変換もネット中どこの掲示板を見てもすこぶる評判が悪い。
各々の解決策を見ると、デジタル出力付きのマイクプリアンプを購入し、プリアンプのデジタルアウトからVS880のデジタル入力に接続したり、DATのアナログ(RCAピン)入力に楽器などを接続し、DATのデジタルアウトからVS880のデジタル入力に接続しているパターンが多いようだ。 解決策で多いのは、VS側のアナログ入力を使わない方法だな。
手持ちのDA変換(デジタルアナログ変換)を持つ音響機器の音を聞き比べて、ベターな選択をすればよい。 初代VSはデジタルアウトがコアキシャル(RCAピン)のみなので、光インターフェースを持つMDやCDとの接続にはコアキシャル←→光コネクタ変換機を別途用意しなければならない。 オーディオテクニカ、Hosa、フォステクスなどから発売されていて、価格は5千円〜1万円ってところか。 我輩もHosa ODL276 \5,800- を近々購入予定。
圧縮録音と合せて、初代VS880は業務用録音機と同じ性能ではないということをよく理解していなければならない。
5.非圧縮録音での問題
入力した信号をそのまま記録するモード(マスタリングモード)では、録音/再生できるトラックが6つである。
ハードディスクからの音声信号が流れるバスには転送速度の限界が有り、細かく編集していると、各トラックが全然バラバラな再生を始めたりする。 ちょどCDの音飛びに近い状態だ。
この場合、停止ボタンを何度か押して、再スタートさせる。
録音中にこの現象を経験したので、私自身はマスタリングモードでの同時使用は4トラックまでとしている。
他のモード(MT1,MT2,LIV)では8トラックフルに使って切り張り編集しても問題は発生していない。
6.電源のON〜OFFは注意
パソコンと同じだ。 電源投入時はハードディスクが回転し、ソフトをローディングしてからスタンバイ完了となる。 この時は約40秒。
電源OFFは[SHIFT] を押しながら、[STOP]を押し、シャットダウンの指示を行う。 すぐ電源スイッチをOFFにしてはいけない。 データが紛失する可能性もあるし、ハードディスクにもショックがお大きい。 テレビのように簡単にできないものか。 理屈は分っているだけにもどかしい。
特に編集がうまく行かず、時間切れでイライラして作業を終える場合、終了のじゅもんをかけて、[PowerOff/restart]と表示されるまで無言で待つのは、余計にイライラする。
■ 便利な機能
いきなり不得手な機能を列挙したのでケチョンケチョンのVS880だが、それを理解した上で十分使える機能も豊富だ。
1.何度再生しても、音質が変わらない
この為に買ったと断言できる。 これまではカセットMTR(4トラ)を使っていた為、再生を繰り返す度に音質が低下していくのが我慢できなかった。 アナログテープは再生を繰り返すに従って高音域が減少する。
しかも、演奏やミックスが上手くないので、何度も繰り返す。決定にも時間がかかる。
この時に何度再生しても音質が録音直後と変わらず、指定時間にもボタン一つで瞬時に移動できるのは快適だ。
各パート毎に録音されたトラックを左右のスピーカー音にまとめ上げる楽しみを十分満喫できる。
編集失敗や演奏消去があっても[UNDO]1つで元に戻るのは大胆な編集時でも安心感がある。
ただ、圧縮方式で主に作業するため、録音前のスルーで聞いた音(非圧縮音)と、録音後に再生する音(圧縮音)では若干の音質変化がある。
録音モード | 圧縮率 | 1分あたりの容量 | 最大録音時間/1GB |
---|---|---|---|
マスタリングモード | 0% | 5MB | 202分 |
マルチトラック1 | 50% | 2.5MB | 404分 |
マルチトラック2 | 37% | 1.8MB | 539分 |
ライブモード | 31% | 1.5MB | 646分 |
そのデータ圧縮技術とは、データの間引きで実現している。 人間の聴覚範囲(20Hz〜20kHz)の外側と聞こえてなくても気付きにくい音を錯覚を利用して間引いているそうだ。
MDと基礎技術は同じらしいが、そこは楽器メーカー。 音楽的に変化に耐えられる範囲としているらしい。
そういう情報を事前に得ていて先入観を持って聴くからそう思うのかもしれないが、
圧縮によって変化するのは、マスタリングモードとライブモードを比較した場合だ。
音量差と高音の残響に変化を感じる。 ライブモードは長く録音できるので、「ライブ収録のように長時間収録するとき」という意味だと思うが、その音はやや強めのコンプレッサーをかけたような印象。 最大音量からデータを間引くからそうなるのであろう。 高域も若干減少するので、残響(リバーブ)の残りが短くなったような印象を受ける。 逆にちょっと前面につまった感じが音が元気になった印象を受ける。
録音開始時の初期モードでは「マルチトラック2」に設定される。 一度録音を始めるとモード(圧縮率)は変更できないので余韻が大切な曲や、何度もピンポンする場合はMT1を使うとよいだろう。
2.8つのシーンによる全設定状態の保存と再現
ミックスダウンを行う時、バランスの聞き比べなどでは記録した複数のシーンに瞬時に切り替えることができるので便利。
2系統のエフェクトの設定なども完璧に元どおり。(あたりまえか...)
例えば、「リズム系は今晩で追い込み、明晩はコード系」と日を分けて作業する場合、途中/直前の状態に戻せるのは便利だ。
ピンポン(トラックバウンシング)時にシーン記録しておけば、ピンポンのやり直しがとっても楽。 後記のコンピュミックスも合せて使うと、数曲同時進行で作業が可能だ。
3.エフェクトボード内蔵によるコンパクト化
コタツの上での編集作業が可能だ。 A3用紙サイズとちょっと大きいが、持ち歩けるとはありがたい。
内部エフェクトもスペック的(16bit)には前世代だが、十分使える。
YAMAHA O2R や、VS1680のリバーブやコーラスと比較すると深みに欠ける。 が、必要にして十分。
ラーメンドンブリを運ぶ気持ちで持ち運べば、何処へでも持って行ける。
4.ソフトウェアバージョンアップによる機能更新
ローランドのホームページを見る限り、旧VS880では98年11月が最終更新のようだ。
データはMIDI SMF 形式(曲データ)として配布されるので、ローランドホームページからダウンロードし、SMFが再生可能なシーケンサーを使い、VS880のMIDI IN に接続。 そしてデータを再生(PLAY)することでバージョンアップが完了する。
シーケンスソフトが無くても、再生専用ならローランドのホームページから無償ダウンロードできる。
5.CD−RやMO(230MB)による完全バックアップ
これも前記の無償バージョンアップにて可能になった機能。 特にCD−Rは一枚200円以内でバックアップが取れるので経済的に助かる。 処理時間は1ギガバイト(2枚)では1時間ほどかかる。
6.ハードディスクの市販品流用
内蔵ディスクはIDE2.5インチのディスクが接続可能。 ディスク回転速度は5400回転までが限度であろう。
その訳は、7000回転以上のディスクは放熱対策をしっかりやらないといけないが、VS880にはその放熱ファンが無い。
外部ディスクはSCSIが使用可能だ。 コネクタは25ピン(MACとおなじ)なので購入時は注意してコネクタ形状を確認すべし。
外部SCSI端子にファンを取り付けた7000回転以上のハードディスクを接続し、これに記録/再生すれば、マスタリングモードで6トラックフルに使っても音声データの転送遅れは無くなるのかもしれない。←想像。
7.ミキサー操作の推移が記録可能(コンピュミックス)
シーンによる初期設定の記録と、MIDIイベントを1つづつ編集できるソフトとの併用で可能となる機能。
ボリュームや各つまみのリアルタイムな動きをMIDIデータとして出力できるため、ミックスダウン時のこまかな操作を記録、再現できる。
例えば、歌のある部分のみ「殺してやる〜 やる〜 やる〜」というディレイをかけたい場合、再生のたびにエフェクト送りのツマミをグルグル回すのはめんどくさい 。 VS880と同期を設定したシーケンサーにグルグル回すタイミングを演奏情報(MIDI)と思わせ記録し、再生時にVS880へMIDIデータを送ると、何度繰り返しても同じタイミングでVS880のミキサーが変化するので、他の編集作業に取り掛かれる。
シーケンサー専用機よりは、パソコンソフトのように「イベントリスト」という表形式でMIDIデータをいじれる機能を持つシーケンサーがこの場合は使いやすい。
各チャンネルのボリュームやパン(定位)の変化を記録するくらいならシーケンサ専用機(YAMAHA QYxxx , Roland MC-xxx など)でも十分可能だ。
我輩はシーンと合せてピンポン(トラックバウンシング)の時に記録している。
こうすると、ピンポンを数世代行う場合、作業の後戻り(初回に戻ってのやり直し)をするときに記憶のみに頼らなくてよいので大変楽だ。
実は、この旧VS880 Ver3.x からは本体のみでコンピュミックスが出来るようになっているが、操作が難しく、まだ成功したことがない。 それで、外部記録(パソコン)という方法をとっている。
■ ハードディスクの交換
2.5インチIDEディスクなら装着可能。 でも、認識は4GBまで。
■勝手に使ってくれ
VS880用トラックシートのダウンロード
(PDF形式)
VS-880のマニュアル最終ページのトラックシートはVトラック8本全て記載されているので、1トラックごとの書き込める枠が小さい。 そこで自分の場合はバーチャルトラックは通常第4までしか使わないので書き直した。
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